2015年3月14日土曜日

妊娠中のアルコール摂取はOK?『お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント』

こちらの書評をTwitterで何度か見かけて本書を知り、妊娠を機に読んでみた。
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著者は米国の経済学者の女性で、妊娠出産にまつわる通説について徹底的にエビデンス(根拠)を追求している。どの章も非常に興味深く、私には珍しく一気読みしてしまった。

序章は「テレビが子供の成績に影響するか?」という多くの親にとって関心の高い問題を取り上げ、統計的に確実とはどういったことを意味するのか示している。少し長いが、その箇所を引用する。

一般的に、子供にテレビを見せない両親は教育水準や年齢が高く、読書量が多い傾向がある。子供の成績に影響を与えるのは本当にテレビだろうか。…
因果関係の存在を…証明するには、テレビ禁止の家の子供に無理やりスポンジボブを見せ、他の要素を一切変えない場合、学校の成績を示す必要がある。…
結果的に…テレビは子供の学業成績に一切影響しないことを突きとめた。影響は、ゼロだ、と。この結果は非常に厳密で、テレビの影響がないことは統計的に確実だと言っているのだ。


本書のうち、個人的に参考になった項目を結論部分だけ抜き出してみる。

妊娠中にOKなこと
・妊娠中期と後期には飲酒は1日1杯まで、初期でも週に1〜2杯飲んで構わない
・すべてのエビデンスが1日2杯まではコーヒーを飲んでよいことを示しているし、ほとんどのエビデンスは3〜4杯飲んでもよいことを示している
・スシや生卵については、妊娠時以外のときと同程度に気をつていればよい
・ヘアカラーの使用を憂慮する必要はない
・妊娠前からネコを飼っていた場合、ネコのトイレを処理すること

妊娠中にNGなこと
・生やレアの肉、洗っていない野菜や果物を食べること(トキソプラズマ)
・生乳チーズ、デリターキーを食べること(リステリア菌)
・ガーデニング(トキソプラズマ)
・妊娠初期に暑い風呂に入ること(胎児奇形)
・妊娠36週以降、外気温が40度以上になったときに外出すること(早産)
・体の左側を下にする体勢以外の体勢で眠ること(死産)
・喫煙(早産、低体重児、SIDS(乳幼児突然死症候群))

その他
・妊娠初期でつわりのない妊婦の流産率は30%だが、つわりがある妊婦では8%
・出生前診断について、羊水検査の流産率は相当古いデータが参照されており、現在はかなり流産率が下がっている
・妊娠中に運動をしていた女性のほうが、しない女性に比べて妊娠にともなうリスクが低い(ただし、妊娠中に無理に運動する必要はない)
・赤ちゃんが生まれる可能性が最も高いのは39週
・ラズベリー・リーフティーと月見草オイルが陣痛を促進するというのは何の根拠もない

本書は全ての妊婦さんとその家族にぜひ読んでもらいたい。妊娠出産にまつわる言説の中には根拠のないものも多く、そういった迷信に捕われて行動を制約するのはバカバカしい。また、著者が指摘しているように、同じデータやエビデンスを見ても各人の価値観によって選択が異なることは大いにあり得る。そこで、本書の結論部分だけでなく、その結論に至ったエビデンスを見て、各読者が自己の価値観に基づいて意思決定することをお勧めする。

特に出生前診断について検討されている方は第8章は熟読する価値がある。その他に興味深い章としては、つわりの時期と対処法が第7章に、切迫早産の安静に効果がないことが第13章に書かれている。また、第18章ではバースプランをテーマにしており、胎児モニタ、会陰切開、子宮収縮剤の3つに関するメリット、デメリット、陣痛中の食事、臍帯切断のタイミングについて言及している。出産が近くなったら読み返そうと思う。

なお、本書の訳者あとがきに重要な指摘が2点あった。
・本書は米国で2013年に出版されて以来、賛否両論である。特に「妊娠中の飲酒は少量であれば問題なし」とした点は医師から批判されている。
・原書のうち、妊娠中の医薬品の服用、分娩時の麻酔の使用、自宅出産に関する章は、日米で状況がかなり異なるために割愛されている。

私は無痛分娩を希望しているので、無痛分娩に関する章はぜひとも邦訳に入れてほしかった。残念!

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